State Papers Onlineが英国トップクラスの大学の初期近代史研究を変える

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ジョン・クーパー先生

State Papers Onlineが英国トップクラスの大学の初期近代史研究を変える

(State Papers Online transforms early modern historical research at top UK universities)

初期近代最大の政府文書を学生にオンラインで提供する最初のイギリスの学術機関の中で、ヨーク大学とダラム大学は16世紀研究と17世紀研究に新局面を開きつつあります。センゲージラーニング傘下のゲールが提供するState Papers Online, 1509-1714は、テュ―ダー朝とステュアート朝の内政と外交活動の記録をデジタル版で提供します。ヨーク大学の歴史講師のジョン・クーパー博士(Dr. John Cooper)とダラム大学の初期近代イギリス史上級講師のナタリー・ミアーズ博士(Dr. Natalie Mears)が、この電子リソースが学問の新しい道を拓き、初期近代研究を変容させているかを論じます。

ヨーク大学はイギリス最大の歴史学部を擁する大学の一つで、卓越した研究文化に恵まれ、世界各国からの留学生が学んでいます。同大学は2008年にState Papers Online(SPO) パート1を導入し、このほど最後のパート4を導入しました。パート1とパート2はテュ―ダー朝をカバーし、パート3とパート4はステュアート朝をカバーします。4つのパートを合わせると、イギリスと近代世界の行方を方向付けた初期近代の社会経済、政治、宗教を理解するために不可欠のリソースになります。

「他で代替できないオリジナル資料に電子的にアクセスする」

以前、同大学はState Papersの一部を印刷体で所蔵していました。そのうちの一部は損傷が大きく開架書庫での閲覧に堪えられないため、特別コレクションとして利用が制限されていました。教員や学生はわざわざキューの国立公文書館やロンドンの大英図書館まで足を運び、原資料を利用していました。その時ですら、資料が利用者の手の酸で損傷し、手稿のインクが汚れ、読めなくなることをアーキヴィストが危惧したため、利用は制限されていました。

ヨーク大学歴史講師のジョン・クーパー博士は言います。

「SPOは、学部生から博士課程の大学院生に対して、約300万のオリジナル資料への無制限アクセスを提供することで、すでに研究に深い影響を及ぼしています。手稿は検索可能なカレンダーと紐付けされています。カレンダーは時系列に当該手稿の梗概を示すことによって、必ずしも原文を参照しなくても済むようになります。」

「SPOは原資料を探す煩雑さも、原資料を手に取って見るために長い距離を移動する手間や負担をなくしてくれました。今、学生や教員スタッフは、情報を探すというよりも研究のクオリティを上げる方に多くの時間を費やすことができるようになっています。研究者は自分のPCでも研究はできるので、欲しい情報を得る時間を相当程度短縮することができます。」

「最近、エリザベス1世の時代の行政官であるサー・フランシス・ウォルシンガム(Sir Francis Walsingham)に関する研究プロジェクトを完了しました。実は研究プロジェクトの開始当初は、四苦八苦していたのです。というのも、私はヨークにいるのですべての時間、(国立公文書館のある)キューで過ごすというわけにはいかなかったからです。でもSPOを使うようになって、自宅からでもすべての記録にアクセスできるようになり、手稿を比較し、詳しく調べたい手稿については拡大表示もできます。私の著書の外交政策に関する部分が可能になったのは、外交政策のオリジナルの手稿にアクセスできるようになったからに他なりません。」

「研究水準を引き上げる」

クーパー博士は、論文の研究基盤を改善してくれるSPOは学部生の研究を全く新しい水準に引き上げてくれると言います。

「私が最も驚いたのは、2年生がSPOを精力的に使って、論文のテーマを確定し始めるようになったことです。彼らは様々な電子リソースを試してしましたが、その中でSPOが最も期待に応えるデータベースだったのです。

「ヨーク大学での6年間に私が出会った論文の中で最も興味深いと思ったのは、SPOを使い、文化的マイノリティ集団に関する記録を追跡し、非白人やアイルランド系移民や旅行者-エリザベス朝の時代には「ジプシー」「エジプト人」と呼ばれていました-の体験を対象にした研究です。このテーマの研究は極めて難しいのです。というのも、ジプシーが自ら残した記録は稀なのですから。しかし、SPOを得たことで、政府がアイルランド系旅行者のことをどう考えていたのか、どのように、なぜ政府はジプシーに困惑していたのかなど、公式資料を跡付けることが可能になったのです。」

「この学生は「エリザベス1世と枢密院勅令」など伝統的な政治史料を、想像力をもって、斬新に活用し、以前はほとんど未開拓であった歴史研究の新領域を切り開きました。カレンダーを読むという最低限の水準から手稿それ自体の読み解きに至るまで、この学生が示した高度なスキルは、通常は修士課程の学生に期待しているものですが、実際にそれができる学生はやはり違うのです。」

「デジタルアーカイブが学生の自習をサポート」

ダラム大学は、サンデー・タイムズの2012年度大学実績一覧では第3位に、クアクアレリ・シモンズ社の世界大学ランキングでは第15位にランクインしました。初期近代イギリス史の上級講師、ナタリー・ミアーズ博士は、イギリス、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、中国の歴史家で構成された歴史学部トップ30の一つであるダラム大学で7年間に亘り研究と教育に携わってきました。学生が学習するあり方の変化をSPOがうまく掬い取ってくれていることを説明してくれました。

「私が20年前学生だった頃は、図書館で資料を読んでいたものです。今の学生は夜遅く自分の部屋で勉強しています。SPOがあれば、いつでもインターネットを通じてデータベースにアクセスできますし、好きな時に好きなところで勉強できます。」

「SPOが登場する以前、学生は印刷媒体のカレンダーを読んでいました。印刷体のカレンダーは図書館に3冊しかないため、3人しか利用できませんでした。現在歴史学部だけで600人の学生がいるので、これでは問題です。でも、今はオンラインでカレンダーを読むことができるので、多くの学生が同じトピックの資料にアクセスすることができるようになりました。これはとても重要なことです。というのも、エリザベス1世と政治における女性のような特殊なテーマに関心を抱く学生が出てくるからです。」

「学生に16世紀と17世紀の手稿を読むトレーニングをする」

クーパー博士は、さらに進んでカレンダーでなく、オリジナルの手稿にアクセスする重要性を説明してくれました。

「SPOのオリジナル資料を学生が読むことができるようになるよう、学部生と修士課程の大学院生を対象に古文書学のトレーニングコースを始め、彼らが16世紀と17世紀の手稿の研究をするためのサポートをすることにしました。オンラインのチユートリアルも用意されています。私自身は自分の院生にSPOのサイトを紹介し、カレンダーと手稿の紐付けとその解釈の方法を教えました。手稿には書かれた文字以上のものがある、しばしば書かれた文字以外の手掛かりがあると説明しています。たとえば、手紙を裏返せばオリジナルの住所や受け取った日付、役に立ったと考えたかどうかの文を見ることもできます。学生は記録の優先順位をオンラインで辿ることができますが、これは紙媒体のカレンダーでは非常に難しいことです。」

ミアーズ博士は言います。

「SPOという古文書ツールが登場する以前は、学生に手稿の本を見せようとすれば、図書館に1冊しかないか、図書館で入手できなければPRO(Public Record Office)のウェブサイトを訪問するしか方法はありませんでした。学生はオリジナルの手稿を見れば普通たじろぎますが、SPOを使えば、手稿を平易に解読するツールが備わっています。だから多くの学生は初期近代に関する論文に集中して取り組むことができるようになりました。

「歴史家が物語を研究する方法を学部の一年生に教える」

ヨーク大学ではSPOは主として学部3年生以上が使っていますが、学部1年生も使い方は学びます。クーパー博士は言います。

「SPOを使ってヨークの歴史をケーススタディとした学部1年生用の授業を始めることにしました。学生が学んでいる物語を歴史家がこれまでどのように研究してきたかを学生に教えるというものです。おそらく大学入学前には勉強したことがないことだと思います。学生には、重要な著作を読み、論文を比較し、ヨーク史の様々な物語を比較しながら討論するよう指導しています。たとえば、1536年から1537年に起こった恩寵の巡礼の反乱の後、1541年ヘンリー8世がヨークを訪問しますが、このとき膨大な数の書簡が生み出されました。これらの書簡はすべてSPOで見ることができます。」

「学部1年生には、できるだけSPOにアクセスし、カレンダーと手稿を自分の眼で見、どこでも読めるところがあるかどうか見てみるよう指導しています。これによって学生は、物語を使って歴史の記録を作り出すという考えを教わり、必ずしも記録が完全というわけではないことを学ぶのです。歴史家が使う記録は政治家の文書交換や法律的理由から作られるのであって、単に歴史家だけのために作られるのではありません。」

「学生を若手研究者へ指導する」

ミアーズ博士は言います。

「私の学生の多くは、エリザベス1世と結婚について勉強するのが好きで、ファッションや「彼女は自分自身のイメージをコントロールしたか?」のようなテーマに関心を持っています。学生には、宗教改革やヘンリー8世のような他の領域も見て置くようにと言っています。」

「私の学生の一人が、16世紀のカレーの宗教の変化について論文をまとめました。イングランドとフランスの辺境の国境地帯では潜在的に思想の異なる発展が見られたのですが、この地帯の宗教変化に注目したものでした。この学生は、詳しい情報を得るために、単に索引ではなく、カレンダーから手稿のドキュメント全体を読むことができました。SPOを使ったおかげで最優秀賞の成績を収めることができたのです。論文を書く場合、学生はカレンダーだけでなく、オリジナル資料を活用することが求められています。SPOがこれを可能にしたのです。」

「学生がSPOを使うとき、よくグーグルでやるようにキーワード検索をします。でも、彼らは単なるキーワード検索ではなく、然るべき筋道を辿った研究法についてのトレーニングに対してとても感度が良いのです。こうやって学生は然るべき研究者が使うスキルを身に着けることができるのです。SPOは研究プロセスを再現し、学生が手稿を発見するのを手助けしてくれます。」

「ダラム大学では、学生に対して、必ずしも論文指導でなくても、2年生や3年生に対して一次資料を読むよう指導しています。学生にオリジナルのカレンダーや手稿を見せます。図書館に連れて行き、本物を見せるのです。そしてSPOから印刷したものを見せます。そうやって、データベースで利用できることがどんなに便利なことかを実感してもらうのです。SPOは学生が自信をもって、誰の力も借りずに一次資料と取り組むのを助けてくれます。中には、SPOを使って研究をすることができるという自信が得られ、次の年修士課程を修了した学生もいました。」

「研究助成金が削減される中で大学院生の獲得に効果」

ミアーズ博士は言います。

「SPOはダラム大学にリアルな価値を与えています。定まったポストを有しない研究者にとって特にそうです。SPOは大学では研究者だけではなく、教員スタッフと学生も使うことで、教育と学習の成果に影響を与えています。大学はSPOを高度な研究ツールと見なしていますが、それだけではありません。」

「SPOは本学に入学する大学院生の数を増やすのに役立っています。ここでは、ロンドンのPROから遠く離れていても、価値のある研究資料にアクセスできるのですから。本学には、学生に価値を提供し、大学院生を引き寄せられるようSPOを購入したいという大きなニーズが学部の壁を超えて存在していました。その結果、過去3年間で修士課程と博士課程の応募学生数が増えたのです。」

「外部の研究助成金が縮小し、研究補助金が消滅する状況の中で、SPOは広範囲のオリジナル資料へのアクセスを可能にし、ダラムを離れなくても学生が様々なテーマの論文をまとめ上げるのに役立っています。SPOを導入することは、外部の研究補助金を確保することにも役立つでしょう。なぜなら、大学がトップクラスの研究リソースへの投資を惜しまない姿勢を示していることになるのですから。SPOは国際的にもトップクラスの研究大学としての地位を高めることを目的とした本学の投資活動の一環でもあるのです。」

「海外の学生を招きよせる」

ジョン・クーパー博士は言います。

「ヨークは優れた研究文化を有しているとの名声を得ています。SPOは本学がイギリスでも海外でも卓越した研究機関であるとの声価を得るのに役立っています。たとえば、本学にはカナダと台湾出身で、16世紀と17世紀のイギリス史を研究する博士課程の留学生がいます。彼らは、母国の大学ではSPOにアクセスすることができなかったでしょう。イギリスの数ある大学の中から本学を留学先に選んだのは、SPOを導入していたからなのです。」

「他機関への助言」

クーパー博士もミアーズ博士も、高校や大学での歴史教育が過去20年間、大きく変化したと口を揃えます。専ら政治史が主流だった歴史から社会史のような新しいタイプの歴史への変化が生じましたが、後者の新しい歴史にとってはSPOが不可欠です。

クーパー博士は熱く語ります。

「私の次の研究プロジェクトは、エリザベス1世のアイルランド植民地化を含む16世紀アイルランド史です。これはイングランド国務文書から再構成しなければなりません。なぜなら、アイルランド国務文書は1920年代にIRA(アイルランド共和軍)により破壊されたからです。SPOは現在、アイルランド史をやる上で主要な資料集なのです。」

クーパー博士は最後に言いました。

「私たちは予算的に厳しい時代にいます。SPOは大学にとって相当な投資です。しかし、SPOのすべてのモジュールを有することは大学に便益をもたらしてくれます。ECCO(Eighteenth Century Collections Online)やEEBO(Early English Books Online)とともに、SPOがあれば、初期近代史の主要な資料へのオンラインでのアクセスが実現されます。SPOは、16世紀から18世紀の主要な記録をなす手稿文書を利用し、活用する環境を革命的に変えるポテンシャルを持っています。初期近代史の大学院生を獲得したいという意欲を持っている大学であれば、SPOに収録された記録へアクセスできる環境を整えることを検討しないわけにはいかないでしょう。」

ジョン・クーパー先生のプロフィールは以下のサイトを参照ください。
http://www.york.ac.uk/history/staff/profiles/cooper/
ナタリー・ミアーズ先生のプロフィールは以下のサイトを参照ください。
https://www.dur.ac.uk/history/staff/profiles/?id=1574

本インタビューの原文は以下を参照ください。
http://gale.cengage.co.uk/case-studies/spo-case-study.aspx

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