British Theatre, Music and Literature

British Theatre, Music and Literature

本アーカイブは、演劇、音楽、文学を主題とします。演劇や音楽では、特にそのパフォーマンスの側面に焦点を当てます。イギリスでは1737年に演劇検閲法が制定され、戯曲は検閲の対象となり、正統劇(科白劇)は勅許劇場でのみ上演が認められるようになります。検閲の法制化により多くの劇場は閉鎖に追い込まれ、劇作家としての道を断たれ、小説家に転向した作家もいます。勅許劇場による正統劇の独占は1843年の劇場規制法により解消されましたが、検閲はその後も続きます(廃止は1968年)。新作演劇にとっては厳しい時代でしたが、斬新な演出で古典劇に新風を吹き込み、視覚効果を狙った演出が流行ります。またヴィクトリア朝期には、勅許劇場以外のマイナー劇場でメロドラマやパントマイムが一世を風靡しました。本アーカイブでは演劇検閲法の制定前後をイギリス演劇史の転換期とみなし、18世紀半ばまで遡り、収録資料を選定しています。勅許劇場の一つ、ドルリー・レーン劇場で上演された戯曲、検閲に当たった宮内長官に提出された戯曲、演劇プログラムの他、劇場の収支報告書のような演劇社会史の資料も収録されています。

音楽の世界に眼を向けると、19世紀のイギリスはほとんど見るべき作曲家を輩出していません。しかし、音楽的に不毛の地と見えるイギリスでも演奏会や音楽批評は盛んに行なわれていました。モーツァルトからワーグナーまで18、19世紀の作曲家は演奏の地を求めてイギリスに渡りました。外国の作曲家に作曲を委嘱し、演奏会が盛んだった19世紀イギリスは、音楽が王侯貴族のものから市民のためものへ変貌したプロセスを歴史的に再現するための格好のケーススタディを提供します。本アーカイブでは、演奏会プログラムや音楽関係者の書簡を多数収録します。

本アーカイブに収録される文学資料は、ロマン派からヴィクトリア朝文学までの通常のイギリス文学史では、言及されることが少ない文学関係資料を収録します。一つはペニー・ドレッドフル(三文怪奇小説)、もう一つはブロードサイド・バラッドです。どちらも作者は無名ながら、民衆の世界で生きながらえてきた想像力の産物です。工業化や都市化の進む19世紀イギリスで、近代以前に遡る物語や口承文学の伝統が根強い人気を得ていたことは、19世紀イギリス文学史を見直す視点を提供するだけでなく、文化史、社会史研究の新しい地平を開拓する機会にもなるでしょう。

これら演劇、音楽、文学の資料からは、高級文化と大衆文化の交差という、すぐれて20世紀的な文化の姿が見えてみます。本アーカイブは、19世紀文化を歴史的に再現させてくれるばかりでなく、20世紀文化の起源をも垣間見せてくれます。

演劇資料(収録コレクションとコレクションの概要)

■Drury Lane under Sheridan, 1776-1812: Manuscript Plays and Correspondence(シェリダン時代のドルリー・レーン劇場:劇作品手稿と書簡)

リチャード・ブリンズリー・シェリダンが支配人を務めた期間に、ドルリー・レーン劇場に提出された130篇の劇作品と4篇の書簡を収録します。

–収録劇作品の作者

・ リチャード・ブリンズリー・シェリダン
(Richard Brinsley Sheridan)

・ エリザベス・インチボルド

(Elizabeth Inchbald)

・ ベンジャミン・トンプソン

(Benjamin Thompson)

・ ジェイムズ・コブ(James Cobb)

・ チャールズ・ラム(Charles Lamb)

・ ジョン・チャモック(John Chamock)

・ フランシス・ワイマン(Francis Wyman)

・ ジョゼフ・ベントレー(Joseph Bentley)

・ ウィリアム・プロストン(William Proston)

・ ジェイムズ・ウィリアム・バレット

(James William Barrett)

・ ジャン・フランソワ・マルモンテル

(Jean François Marmontel)

・ ウィリアム・ホガース(William Hogarth)

・ アンソニー・デイヴィッドソン

(Anthony Davidson)

・ メアリー・オブライエン(Mary O’Brien)

・ ジョン・オキーフ(John O’Keefe)

・ アン・ホッブズ(Ann Hobbs)

・ ウィリアム・ウェザーバーン

(William Wetherburn)

・ メアリ・ロビンソン(Mary Robinson)

・ フレデリック・レイノルズ

(Frederic Reynolds)

・ ジョン・バンブラ(John Vanbrugh)

・ トーマス・ムーア(Thomas Moore)

・ サミュエル・ジャクソン・プラット

(Samuel Jackson Pratt)

・ ジェシー・フット(Jesse Foot)

・ トーマス・イングペン(Thomas Ingpen)

・ トーマス・シェリダン(Thomas Sheridan)

・ ウィリアム・ヤング(William Young)

・ フランセス・シェリダン(Frances Sheridan)

・ アンドリュー・フランクリン

(Andrew Franklin)

・ トーマス・オニール(Thomas O’Neill)

・ ジョン・カントン(John Canton)

・ アレクサンダー・ドノヴァン

(Alexander Donovan)

・ ジョン・パトシャル(John Patteshull)

・ ロバート・ロビンソン(Robert Robinson)

 

■Lord Chamberlain’s Plays(宮内長官戯曲集)

1737年の演劇検閲法の施行後、戯曲は検閲の対象になります。上演を目的とした戯曲は宮内長官(Lord Chamberlain)に提出されました。1824年から検閲が最終的に廃止される1968年までのものは、大英図書館の近代文芸手稿コレクションの一部として保存されています(1743年から1824年までのものは、ハンティントン図書館に所蔵されています)。本コレクションは大英図書館に所蔵されている戯曲の中から、1824年から1899年までに提出された作品を収録します。

18世紀末から19世紀前半にかけての劇場では演技の微妙な陰影よりも視覚効果を狙った演出が流行ります。また、増大する都市労働者向けの娯楽として、勅許劇場以外のマイナー劇場では、メロドラマ性、奇抜さ、視覚的効果を狙った大衆受けする演劇が上演されました。1843年の劇場規制法制定により、正統劇が勅許劇場以外での上演が可能になったものの、19世紀後半の演劇界では、それまでマイナー劇場で流行していた大衆演劇的要素が勅許劇場を巻き込んで上演されるようになりました。

ヴィクトリア朝演劇界ではミドルクラスや大衆向けの作品として、メロドラマが流行しました。異国趣味に訴えるもの、航海劇、酒に溺れた親に育てられる子どもの困窮を描くもの、冤罪に陥った主人公が名誉を回復する筋立てのドラマ、愛国心に訴える軍事劇、観客の身近な話題をモチーフとする家庭ドラマなど、様々なタイプのメロドラマが上演されました。これらのドラマは、ある意味で20世紀の映画やテレビドラマの先駆とみなすこともできます。

収録劇作品の作者

・ ギルバート・アボット・ア・ベケット(Gilbert Abbott À Beckett)

・ ジョアンナ・ベイリー(Joanna Baillie)

・ トマス・ヘインズ・ベイリー(Thomas Haynes Bayly)

・ ディオン・ブーシコー(Dion Boucicault)

・ ジョン・ボールドウィン・バックストーン(John Baldwin Buckstone)

・ ヘンリー・バイロン(Henry J. Byron)

・ ジョゼフ・スターリング・コイン(Joseph Stirling Coyne)

・ チャールズ・ディブディン(Charles Dibdin the Younger)

・ トマス・ディブディン(Thomas Dibdin)

・ エドワード・フィッツボール(Edward Fitzball)

・ キャサリン・ゴア(Catherine Gore)

・ コリン・ヘンリー・ヘイズルウッド(Colin Henry Hazlewood)

・ ダグラス・ジェロルド(Douglas Jerrold)

・ ジェームズ・ケニー(James Kenney)

・ ジェームズ・シェリダン・ノウルズ(James Sheridan Knowles)

・ ジョン・ウェストランド・マーストン(John Westland Marston)

・ ジョン・オクセンフォード(John Oxenford)

・ ウィリアム・トマス・モンクリーフ(William Thomas Moncrieff)

・ ジョン・マディソン・モートン(John Maddison Morton)

・ リチャード・ブリンスリー・ピーク(Richard Brinsley Peake)

・ ジョージ・ディブディン・ピット(George Dibdin Pitt)

・ アイザック・ポーコック(Isaac Pocock)

・ ウィリアム・レマン・リード(William Leman Rede)

・ トマス・ウィリアム・ロバートソン(Thomas William Robertson)

・ ジョン・パルグレイブ・シンプソン(John Palgrave Simpson)

・ トム・テイラー(Tom Taylor)

 

■Drury Lane Theatre Archive(ドルリー・レーン劇場資料集成)

1879年ドルリー・レーン劇場の支配人となったオーガスタス・ハリス(Augustus Harris)は、大衆が求めるエンターテインメントを提供するプロデューサーとして類まれな才能を持っていました。ハリスが支配人になったのと同じ頃、作曲家のオスカー・バレット(Oscar Barrett)もドルリー・レーン劇場に関わり始めました。バレットは、自身のものだけでなく他の作曲家のものも含め、音楽劇用の楽曲をドルリー・レーン劇場に蒐集します。これが、現在大英図書館が所蔵するドルリー・レーン音楽資料アーカイブの基礎をなしました。収録されている楽譜は、バレットの広い活動範囲を反映するように、ドルリー・レーンで演じられた演目用楽曲だけでなく、それ以外のロンドンの劇場(ライシアム、クリスタル・パレス、ロイヤル・グレシアン、ガイエティ、ブリタニア、ボロー、ストラトフォードなど)だけでなく、地方劇場で上演された演目用楽曲も含みます。

ヴィクトリア朝期のイギリスでは、パントマイム、バレエ、バーレスク、オペレッタなど、音楽を伴う大衆演劇が大流行します。20世紀のミュージカルの源流にも位置づけられるヴィクトリア朝後期の音楽劇で使われた楽曲の全貌が本コレクションによって明らかにされます。また、楽譜が収録されているだけでなく、楽曲が提供された演目名、上演時期、劇場名、作曲者名、音楽パートの概要などをまとめた解題(アノテーション)が研究資料として有益です。

■British Playbills, 1754-1882(演劇プログラム集)

1754年から1882年までに上演された演劇プログラム(ビラ)約22,000点を収録します。収録プログラムは、ほとんどがドルリー・レーン、コヴェント・ガーデン、ヘイマーケットの勅許劇場で上演された演目です。イギリスの伝統ある三大劇場の上演史を研究する上で格好の資料集です。

■Drury Lane Receipts(ドルリー・レーン劇場収入報告書集成)/English Stage after the Restoration, 1733-1822(王政復古以後の英国劇場)

ドルリー・レーン劇場、コヴェント・ガーデン劇場、ヘイマーケット劇場の会計収支報告書を収録します。

音楽資料(収録コレクションとコレクションの概要)

■Crystal Palace Handel Triennial(クリスタル・パレス ヘンデル・トリエンナーレプログラム集成)

19世紀のロンドンでは多くのコンサートが開催され、しばしば大陸の有名作曲家の初演もこの地で演奏されました。様々なコンサートの中でも、3年に1回、クリスタル・パレスで開催されたヘンデル・フェスティヴァル(ヘンデル・トリエンナーレ)は19世紀ロンドンの音楽シーンを語る上で欠かすことができません。3日間の会期中、中日は毎年演奏される曲が変わったものの、初日に『メサイア』を、最終日に『エジプトのイスラエル人』を演奏する慣行は変わりませんでした。毎年刊行されたプログラムには、合唱曲の歌詞、オーケストラの奏者名、合唱者名、名誉幹事名、運営会社役員名など、様々なトリエンナーレ関係者の名前が掲載されているほか、女性読者を対象にした様々な商品広告(コルセット、家具、装身具、ピアノなどの楽器)が掲載されていることも見逃せません。さらに、ソリストや演奏に対する観客の反応まで書き込みされている点も注目に値します。1874年、1877年、1880年、1883年、1888年、1894年、1897年、1900年の8回のプログラムを収録します。

■Crystal Palace Saturday Concerts(クリスタル・パレス土曜コンサート資料)

ヘンデル・トリエンナーレと並ぶ19世紀ロンドンの名物コンサート、クリスタル・パレス土曜コンサートは、交響曲や管弦楽曲を多くの聴衆の前で演奏することにより、これらの作品の普及に多くの貢献をしました。

本コレクションは土曜コンサートのプログラムを収録しています。このプログラムが音楽史においてとりわけ資料的価値を有するのは、ジョージ・グローブ(George Grove)が楽曲の解説を書いているためです。グローブやドイツ出身の指揮者、アウグスト・マンス(August Manns)による楽曲解説が掲載されたコンサートプログラムは、音楽の教養を求めるヴィクトリア朝期のミドルクラスの人々にとって、格好の教科書でした。さらに、出版史にとって重要なことは、この解説記事が、グローブによって編集され19世紀後半に刊行された音楽辞典(Dictionary of Music and Musicians)の基礎をなしたことです。プログラムには演奏会関連記事のほか、クリスタル・パレスで開催された各種展覧会や講演会の情報も掲載され、ヴィクトリア朝の文化活動の一端を窺い知るのに興味深い資料です。

■King’s Theatre Haymarket Archive(ヘイマーケット劇場資料集成)

ロンドンにおけるイタリア・オペラのメッカ、ヘイマーケット劇場で演奏されたオペラの楽譜(声楽譜とオーケストラパート譜)を収録します。収録されている楽譜の大半は、実際に演奏された際に使用されたものを使っているため、名前、日付、テンポ、舞台への指示などが記入されているのみならず、劇場関係者のカリカチュアが描かれているものもあります。オーケストラパート譜には奏者の名前が記入されています。19世紀ロンドンのオペラ上演史の貴重な研究資料です。

■Royal Philharmonic Society Archive/Royal Philharmonic Society Music Manuscripts(ロイヤル・フィルハーモニー協会資料集成)

フィルハーモニー協会は、オーケストラによる演奏会の開催によるクラシック音楽の普及を目的として1813年に設立されました(100年目の1912年に現在の名称に変更されます)。イギリスでは、17世紀以来、演奏会は盛んに開催されていたものの、フィルハーモニー協会がそれ以前の演奏会と異なっていたのは、同時代の作曲家の作品を積極的に取り入れていたことです。作曲の委嘱などを通じて同時代の作曲家との交流の機会が増えた協会には、作曲家、演奏家、批評家など同時代の音楽関係者との往復書簡を初めとする資料が多数集まりました。とりわけ、第九交響曲をめぐるベートーヴェンとの交流は有名です。楽譜、書簡、議事録などから構成されたフィルハーモニー協会のアーカイブは、19世紀から20世紀後半にいたるクラシック音楽の知られざる一面に光を当てる貴重な資料群です。

オリジナルの書簡が収録されている作曲家

・ アルベニス(Isaac Albéniz)

・ バントック(Granville Bantock)

・ バックス(Arnold Bax)

・ ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)

・ ベルリオーズ(Hector Berlioz)

・ ブラームス(Johannes Brahms)

・ ブリテン(Benjamin Britten)

・ ブルッフ(Max Bruch)

・ ブゾーニ(Ferruccio Busoni)

・ クレメンティ(Muzio Clementi)

・ コールリッジ=テイラー

(Samuel Coleridge-Taylor)

・ ドビュッシー(Claude Debussy)

・ ドリーブ(Léo Delibes)

・ ディーリアス(Frederick Delius)

・ ドボルザーク(Dvořák)

・ エルガー(Edward Elgar)

・ グノー(Charles Gounod)

・ グリーグ(Edvard Grieg)

・ ホルスト(Gustav Holst)

・ コダーイ(Zoltán Kodály)

・ リスト(Franz Liszt)

・ メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn)

・ ラフマニノフ(Sergei Rachmaninov)

・ ロッシーニ(Gioachino Rossini)

・ サン=サーンス(Camille Saint-Saëns)

・ シベリウス(Jean Sibelius)

・ スマイス(Ethel Smyth)

・ シュポーア(Louis Spohr)

・ ステイナー(John Stainer)

・ スタンフォード(Charles Villiers Stanford)

・ リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss)

・ チャイコフスキー

(Pyotr Ilyich Tchaikovsky)

・ ティペット(Michael Tippett)

・ ワーグナー(Richard Wagner)

 

(ベートーヴェンの書簡は写真複製版をスキャニングしたものが収録されていますが、その他の作曲家の書簡は原本をスキャニングしています)
■JW Davison Papers(ジェイムズ・ウィリアム・デヴィッドソン資料集成)

19世紀イギリスを代表する音楽批評家、ジェイムズ・ウィリアム・デヴィッドソンは、1843年以降亡くなる1885年まで『ミュージカル・ワールド』の編集長を務め、1845年から1878年までタイムズ紙の音楽批評欄に定期的に寄稿、その他、『ペル・メル・ガゼット』『サタデイ・レビュー』などでも健筆を揮いました。本コレクションは、デヴィッドソンが作曲家、演奏家、批評家、ジャーナリスト、音楽出版関係者、コンサート運営関係者、家族などと交わした往復書簡を収録します。大半は、デヴィッドソンが受け取った書簡ですが、デヴィッドソンが書いた書簡も含まれています。書簡の他、新聞記事の切抜、写真も収められています。書簡を交わした著名人物には、作曲家のジャコモ・マイアーベーア(Giacomo Meyerbeer)、セザール・フランク(César Franck)、音楽出版者のジョン・ブーシー(John Boosey)、指揮者のチャールズ・ハレ(Charles Hallé)、ヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒム(Joseph Joachim)、批評家のジョージ・グローブ(George Grove)らがいます。

■Queen’s Hall Programmes(クィーンズ・ホールコンサートプログラム集成)

優れた音響効果によりロンドン有数のコンサート会場に数えられたクィーンズ・ホール(1893年創立)の名物プログラム、プロムナード・コンサートは、低価格で広く大衆に音楽を広めるために1895年に始まりました。聴衆は飲食したり、散歩したり、寛いだ雰囲気の中で音楽を楽しむことができました。1941年火災のためホールが焼失すると、プロムナード・コンサートはロイヤル・アルバート・ホールに引き継がれ、今日に至っています。

本コレクションはクィーンズ・ホールで開催されたコンサートプログラムを収録しますが、大半は1897年から1914年までの18シーズンのプログラムで構成されています。ベートーヴェン、ブラームス、ワーグナー、チャイコフスキーなど、19世紀の音楽がプログラムの中核をなしていましたが、20世紀初頭の同時代の音楽やイギリスの音楽も盛んに取り上げられていました。収録プログラムには、楽曲や社会的・歴史的背景に関する詳細な解説が収められている他、演奏を聴いた聴衆によるコメントも書き込まれています。20世紀初頭のロンドン市民の音楽体験を歴史的に再現してくれる貴重な資料です。

■Royal Albert Hall(ロイヤル・アルバート・ホールコンサートプログラム集成)

ロイヤル・アルバート・ホールで開催された19世紀末のコンサートの中から、ハリソン氏モーニング/イヴニングコンサート(5回)、オラトリオ・コンサート(2回)、スコットランド・フェスティヴァル(4回)、アイリッシュ・フェスティヴァル(3回)のプログラムを収録します。

■St James Hall Monday/Saturday Popular Concerts(セント・ジェイムズ・ホール月曜・土曜ポピュラー・コンサートプログラム集成)

ヘンデル・トリエンナーレ、クリスタル・パレス土曜コンサートと並ぶ、19世紀ロンドンの名物コンサート、セント・ジェイムズ・ホール月曜・土曜ポピュラー・コンサートのプログラムを収録します。

■Sir George Smart Papers/Sir George Smart Programmes/Oratorio Concert Programmes(ジョージ・スマート資料・コンサートプログラム集成)

19世紀イギリスを代表する指揮者、作曲家で、フィルハーモニー協会の創立メンバー、またベートーヴェンの普及に貢献したジョージ・スマートの資料、具体的にはスマートが指揮したコンサートプログラム(オラトリオ・コンサート、地方コンサートなど)、往復書簡、日記などを収録します。コンサートプログラムには、スマート自身の注釈が詳細に書き込まれています。書簡は、スマートの広い交友範囲を反映し、同時代の多くの作曲家、演奏家、歌手、批評家とのあいだで交わされたものを収録しています。ヨーロッパ大陸を訪問した際の日記には、1825年バーデンでベートーヴェンと面会し、インタビューを行ない、交響曲のテンポについて助言を得たことが記述されています。

■Wandering Minstrels Archive(放浪楽団資料集成)

ヴィクトリア朝の放浪楽団”Wandering Minstrels”は、貴族や軍人のアマチュア楽団で、1860年代から40年間に亘り、主に慈善の目的でイギリス各地を訪問し、演奏活動を行ないました。本コレクションは、楽団の運営記録、写真、コンサートプログラムなどを収録します。

■Konzert Programm Austausch(コンサート・プログラム情報)

ドイツの老舗楽譜出版社、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社(Breitkopf & Härtel)は1893年、『コンサートプログラム情報(Konzert-Programm-Austausch)』の刊行を始めました。本情報誌は、世界各地のコンサート情報を提供することを目的とした機関向け定期刊行物で、毎年36分冊が発行され、毎回50から100件のプログラム情報が掲載されました。大都市だけでなく、中小都市のコンサート情報を収録する本情報誌は、20世紀前半の音楽地図に他なりません。音楽関係者は、本誌を通して各地の音楽トレンド、指揮者、ソロ歌手、ソロ演奏家の動向を知ることができました。現代において録音や放送が果たしている役割を果たしたメディアであると言えます。本アーカイブは、1900年から1914年までに発行されたものを収録します。

文学資料(収録コレクションとコレクションの概要)

■Popular Literature in 18th and 19th Century Britain, Parts Three-Ten: The Barry Ono Collection of Bloods and Penny Dreadfuls(バリー・オノ ペニー・ドレッドフルコレクション)

ペニー・ドレッドフル(三文怪奇小説)とは、盗賊、海賊、犯罪者、吸血鬼などを登場人物とする扇情的な物語で、19世紀イギリスで大衆向けの安価な読み物として流行しました。技術革新による製造コストの低廉化、印紙税の廃止、都市化と識字率の向上による読書する大衆の登場といった供給、需要サイドの変化が可能にした新しい読み物でした。1830年代に「ブラッズ(Bloods)」と呼ばれていた頃は、印刷も劣悪で、挿絵として掲載された木版画も再利用された粗野なものでしたが、その後多色刷りになり、仕上がりのクオリティも完成度が向上しました。当初は児童から大人まで広範な読者層を対象にしていたものの、1860年代までに児童をターゲットに絞るようになり、世紀末にはアメリカのダイムノベルの仕様を取り入れるようになりました。

出版社は確定することが難しく、作品は匿名やペンネームで書かれ、発行日や版も明確ではなく、作品間の模倣も多く、挿絵には署名や日付もなく、再利用されたことが多いペニー・ドレッドフルは、出版の歴史が極めて錯綜しているため、書誌は混沌としています。元々安価な紙に印刷され、製本が劣悪なため、損傷を受けやすかったことに加え、その価値が認められるのに時間がかかったため、保存されているペニー・ドレッドフルは極めて稀少です。大英図書館が所蔵するバリー・オノのコレクションは、その意味で貴重なものです。603点の書籍と雑誌や新聞に掲載された3,152件の記事を収録します。未開拓の部分が多いペニー・ドレッドフルの研究に新しい光を当てる資料です。バリー・オノ、本名フレデリック・ヴァレンティン・ハリソン(Frederick Valentine Harrison、1876–1941)は、ミュージックホールの俳優で、少年のころ愛読したペニー・ドレッドフルを蒐集し、蒐集コレクションはその死以後、大英図書館に寄贈されました。

■Popular Literature in 18th and 19th Century Britain, Part Two: The Sabine Baring-Gould and Thomas Crampton Collections(サバイン・ベアリング=グールド、トマス・クランプトン ブロードサイド・バラッドコレクション)

ブロードサイドとは、片面刷りの大版の紙に世の中の出来事を伝えた古いメディアで、新聞の先祖とも言われています。そのテキストが節回しをもって唄われる場合、ブロードサイド・バラッドと呼ばれます。ブロードサイド・バラッドは、文字を読めない大衆のためのメディアとして長い伝統を持ち、その起源は近代以前に遡ります。ところが、産業化と都市化の道を突き進んでいた19世紀イギリスに、俄かにブロードサイド・バラッドが復活します。犯罪、裁判、貧困、政治、スキャンダルなど幅広いトピックを取り上げましたが、特に、死刑執行を間近に控えた死刑囚が行なった最後の告白という触れ込みで、公開処刑場で売られていたものが特に有名です。このメディアには多くの出版社が関わりましたが、中でもロンドンのスラム地帯、セブンダイアルズ界隈を拠点としたジェイムズ・キャトナック(James Catnach)とジョン・ピッツ(John Pitts)は、ブロードサイド・バラッドの歴史の中で忘れることができません。

ブロードサイド・バラッドの書誌情報を整備し、きちんと研究することは、印刷者名や著者名が分からない場合が多いため、困難を極めます。どのような聴衆が聴いたのか、どんな出来事がテキストの形成を促したのかなど、ブロードサイド・バラッドには未解決のテーマが多数残っています。本コレクションは、今後のブロードサイド・バラッド研究の出発点になるでしょう。

■Archives of the Royal Literary Fund(王立文芸基金資料集)

文芸基金(Literary Fund)は、困窮状態にある才能ある作家を経済的に支援することを目的として1790年に設立されました(1845年、英国王室から勅許状を得て、”royal”を冠するようになります)。基金から支援を受けた作家には、サミュエル・テーラー・コールリッジ(Samuel Taylor Coleridge)、 ジェームズ・ホッグ(James Hogg)、ジョン・クレア(John Clare)、ジョゼフ・コンラッド(Joseph Conrad)、ブラム・ストーカー(Bram Stoker)、D.H. ロレンス(D.H. Lawrence)、ジェームズ・ジョイス(James Joyce)ら著名な作家から無名作家まで、多数に上ります。基金の委員を務めた作家には、チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)、サッカレー(William Makepeace Thackeray)、アンソニー・トロロープ(Anthony Trollope)らが名を連ねました。

本アーカイブは、1790年から1918年までのあいだに基金に経済的支援を申請した作家の申請状約3,000件を収録します。申請状(作家自身の申請状のほか、他の作家が署名した申請状)ほか、他の作家の推薦状、決定に関わった基金の役員の書簡、作家の受領書などが収録されています。経済的困窮、病気、災難に直面している作家が自身の状況を率直に伝える申請状、他の作家の推薦状は、作家の生涯に新しい光を当てる文学史の第一級のドキュメントです。

 

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